2015.06.12更新

平成18年の貸金業法等の改正に伴い,出資法の上限利率が20パーセントに引き下げられ,貸金業法でも利息制限法の制限を超える利息契約の締結が明文で禁止されたことから,利息制限法の上限利率を超える高金利の貸付が刑事法的には許容されなくなりましたその結果,街金融という高利貸業者は法的には存在が許されなくなり,そうした業者はいわゆるヤミ金融としてアンダーグラウンドの世界で跳梁するようになりました。ヤミ金業の融資は高金利での融資であるばかりでなく,そもそも回収が困難な債務者に対して融資するため,さまざまな手口を駆使します。例えば,不動産に抵当権設定の仮登記がなされることがあります。この仮登記の意味は,本登記手続をすると費用が高額になるため,仮登記をするものであり,債務者が不動産を任意売却する場合にハンコ代名目で回収するためと考えられます。また,売掛金等の債権について,金融機関は譲渡担保契約を締結した場合でも債務者に信用不安が生じないよう,第三債務者には通知せず,債権譲渡登記のみを経由している場合があります。このような債権について,ヤミ金業者から債務者破たんの場合に債権譲渡通知が送られてくることがあります。しかし,予め債務者に作成させた通知書を利用していることがあり,その法的効力は不明確ですから,第三債務者としては供託所に供託するのが賢明です。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.10更新

平成27年6月1日,改正道路交通法が施行されたことにより自転車運転者の取締りが強化されました。自転車は法制度上,軽車両に分類されるので,交通反則制度の適用がありません。ところで,反則行為に該当しない道路交通法違反(①非反則行為(危険性や悪質性の高い行為)および②軽車両(自転車等)の運転者または歩行者による違反行為全般)についてはいわゆる「赤キップ」が交付される場合があります。この赤キップを簡単に説明すると,赤キップには、警察および簡易裁判所等への出頭に関する情報が記載されています。道路交通法違反事件において①違反者の居所又は氏名が明らかでないとき,また,逃亡するおそれがあるとき②交通切符の受領を拒否するとき③違反の態様が重大であるとき④その他悪質であると判断した時は通常の刑事捜査が行われる場合があります(逮捕・補導など)。交通切符の交付を受けて理由無く出頭しない場合,また,交通反則通告制度における告知または通告を受けた行為について同制度が適用されない結果として刑事手続・少年保護手続を受けた場合において,受けた後に理由無く出頭しない場合などで特に悪質であると判断した時も同様です。
従前は,自転車には「青キップ」がなく,「注意」か「赤キップ」しかありませんでした。自転車の違反行為については,「注意」か「赤キップ」かという落差の大きい状態だったのです。今回の道路交通法の改正は,「注意」と「赤キップ」の間を埋める規制を目的として行われました。
そして,改正道路交通法の特徴として,自転車運転中に信号無視や一時不停止などの一定の危険な違反行為を繰り返すと自転車運転者には講習の受講が義務付けられるようになりました。

 

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投稿者: 今村法律事務所

2015.06.08更新

平成27年6月1日,改正道路交通法が施行され,自転車運転者に対する取締りが強化されました。この改正道路交通法を理解するためには,まず,交通反則制度について理解する必要があります。交通反則通告制度(「通告制度」)は,増加の一途をたどる道路交通法違反事件の処理手続を合理化するため,この種の事件のうち,車両等(自転車などの軽車両を除く。以下同じ。)の運転者がした運転に関する違反行為で,危険性の高くない,又は悪質でないものについて,刑罰によらず,反則行為の種別ごとに額が定められたいわゆる反則金を科す制度です。その処理手続きについては,道路交通法第9章に「反則行為に関する処理の特例」として規定されています(なお,この制度は,昭和43年7月1日から実施され,当初は成人に限って適用されていたが,昭和45年8月20日から少年にも適用されるようになりました。)。
反則行為とは,車両等の運転者がした運転に関する違反行為であって,次の【①から④】ような危険性の高い,又は悪質な違反行為を除いたものとしています(道路交通法125条1項,同法施行令45)。【①過失建造物損壊②交通事故の場合の措置義務違反③酒酔い,無免許,過労等の運転④最高速度違反のうち,超過速度が30キロメートル毎時以上(高速道路においては40キロメートル以上)のもの】
この制度の適用を受ける者を反則者とよび,反則金という金銭を国に納めなければなりません。この反則金の性格は,反則者が任意に納付する金銭であり,刑罰である罰金や科料とは異なります。また,強制徴収される過料とも異なります。そのため,反則金は,前科ではありません。なお,「交通反則告知書」の書式が青い紙に印刷されているため「青キップ」と呼ばれています。青キップには交通反則告知書のほかに交通反則通告書等が一組にして綴じられています。

 

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2015.06.08更新

では,区分所有法7条により,債権が先取特権の保護を受けることができる権利である場合,具体的にはどのような保護が受けられるのでしょうか?区分所有法7条は,「債務者の区分所有権(共用部分に関する権利および敷地利用権を含む)および建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。」とのみ規定しています。ですので,先取特権の客体としては,債務者の区分所有権(共用部分に関する権利および敷地利用権を含む)および建物に備え付けた動産ということになりそうです。そして,先取特権の順位について,区分所有法7条は,「2 前項の先取特権は,優先権の順位および効力については,共益費用の先取特権とみなす。」と規定しているので,区分所有法7条による先取特権は,ほかの一般先取特権よりは優先するが,債務者の特定の財産を目的とする特別の先取特権にはおくれることになります(民法329条2項本文)。そして,不動産先取特権は登記の必要はないが,登記のある(根)抵当権には後れることになり(民法336条),ローン残債がある場合には金融機関等の債権者(通常は(根)抵当権の登記をしている。)が優先されるため,先取特権を実行することによる(マンション管理費等の)滞納金の回収は難しくなりそうです。

 

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2015.06.05更新

マンション管理費を債務者である管理組合員(区分所有者)が故意に支払わない場合,最終手段として法的手続による回収を図ることになります。ここで,滞納者には外にも債権者がいる場合,マンション管理費について優先的に弁済を受けることができないでしょうか?区分所有者が管理費等を支払わない場合,管理費等の債権は,建物の区分所有等に関する法律(「区分所有法」)7条の規定に基づく先取特権により,滞納者に対する他の債権者に優先して弁済を受けることができる旨を規定しています。なお,先取特権とは,法律で定めた債権を有する者が,債務者の一定の財産から優先弁済を受けることができる担保物権です(民法303条)。区分所有法7条により,先取特権の保護を受ける権利は以下のとおりです。
 ①共用部分,建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の付属施設につき他の区分所有者に対して有する債権について(例えば,他の区分所有者が滞納区分所有者のために管理経費(共用部分の水道光熱費・各種点検費・管理委託費等)を立て替えていた場合の立替者からの立替金請求権など)
 ②規約もしくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について(例えば,規約や集会決議で管理費や修繕積立金が定められている場合の管理費や修繕積立金の請求権など)
 ③管理者または管理組合法人がその職務または業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権について(例えば,区分所有法26条4項の規定により管理者または管理組合法人が区分所有者のために訴訟当事者となった場合,区分所有者全員に対して有する訴訟費用の前払請求権や償還請求権など)

 

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2015.06.04更新

マンションの区分所有者がマンション管理費を滞納したまま当該マンションを他人に譲渡した場合,滞納した管理費を買主に請求することはできるでしょうか。この点,区分所有法は,「前条一項に規定する債権(マンションの管理費等のこと)は,債務者たる区分所有者の特定承継人(買主などのこと)に対しても行うことができる。」と規定し(区分所有法8条),マンションの専有部分が売買で譲渡された場合でも,管理費等の債権については,滞納者である売主から買った買主に対しても請求できる旨を定めています。このように区分所有法8条が滞納者の特定承継人に対しても滞納管理費等の支払いを求めることができるとしたのは,区分所有者団体の構成員の地位がその財産上の持分を含めて区分所有権の移転に伴って移転することの反映であると説明されます。つまり,特定承継人(買主)は,その意思の如何にかかわらず,譲渡人と同一の債務を引き受けるべきものであると法律が定めたのです。

 

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2015.06.04更新

マンション管理費を滞納している人がいる場合,そのマンション管理費は消滅時効にかかるのでしょうか。マンションの管理費等の債権については,その性質をどうとらえるかが重要です。この点について,判例(最二小判平成16年4月23日民集58・4・959)は,管理費等の債権は①管理規約の規定に基づいて区分所有者に対して発生するものであり,②その具体的な額は総会の決議によって確定し,月ごとに所定の方法で支払われるものであると判示し,マンションの管理費等の債権は,民法169条の定期給付債権にあたるとしています。定期給付債権とは,基本権である定期金債権から毎期に生じる支分権としての債権であって,その毎期の間隔が1年以内の債権のことです。そのため,マンション管理費等の債権は,5年で消滅時効にかかってしまうことになります(民法169条)。

 

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2015.06.04更新

マンションの管理費とは,マンションの敷地及び共用部分等の維持管理のために恒常的に支出される費用をいいます。つまり,区分所有者が負担するマンション管理業務に対応して発生する費用です。マンション標準管理規約25条1項では,日常の維持管理に必要となる費用である「管理費」と計画修繕等で必要となる費用である「修繕積立金」を併せて「管理費等」と呼んでいます。なお,区分所有法は管理費等の範囲については直接は定めていませんが,マンション標準管理規約27条は,管理費等が充当される「通常の管理に要する経費」として,①管理人人件費②公租公課③共用設備の保守維持費及び運転費④備品費,通信費その他の事務費⑤共用部分に係る火災保険料その他の損害保険料⑥経常的な補修費⑦清掃費,消毒費及びごみ処理費⑧委託業務費⑨専門的知識を有する者の活用に要する費用⑩地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用⑪管理組合の運営に要する費用⑫その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用,を挙げています。

 

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2015.06.03更新

フリーのライターや宅配便等,会社とは労働契約を結ばずに個人事業主として働いているケースがあります。このような場合,同業者で労働組合を作り,会社と交渉することはできないのでしょうか?この点,住宅設備機器の修理補修等を行う会社と業務委託契約を締結して修理補修を行っていた者が,当該会社との関係で「労働組合法上の労働者」と認定された事例があります(INAXメンテナンス事件/最判平成23.4.12判時2117-139)。
 この事例は,以下のような事例です。会社は主として約590名いるカスタマーエンジニア(CE)をライセンス制度やランキング制度の下で管理し,全国の担当地域に配置を割り振り日常的な修理補修等の業務に対応させていました。そして,各CEの業務日及び休日を指定し,日・祝日についても各CEが交替で業務を担当するよう要請していました。CEの業務委託内容は,会社の定めた覚書で規律され,個別の修理補修の依頼内容をCEの側で変更する余地はありませんでした。CEの報酬は,会社が予め決定した顧客等に対する請求金額に,当該CEにつき会社が決定した級ごとに定められた一定率を乗じ,これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていました。会社から依頼を受けたCEは業務を直ちに遂行するものとされ,原則的な依頼方法である修理依頼データの送信を受けた場合にCEが承諾拒否通知を行う割合は1%弱でした。その他,業務委託契約の存続期間は1年間で会社から異議があれば更新されないとされていたこと,各CEの報酬額は当該CEにつき会社が毎年決定する級によって差が生じ,その担当地域も会社が決定してました。また,CEは,会社指定の担当地域内において,会社の依頼する顧客先で修理補修の業務を行い,原則として業務日の午前8時半から午後7時までは会社から発注連絡を受けることになっていた上,顧客先に赴いて上記の業務を行う際,会社による作業であることを示すため,会社の制服を着用して会社の名刺を携行していました。そして,業務終了時には会社が指定する書式の報告書を会社に送付するものとされていたほか,会社のブランドイメージを損ねないように作業手順や会社への報告方法CEの心構えから接客態度等までが記載されたマニュアルの配布を受け,これに基づく業務の遂行が求められていました。
 このような事例について,判例は,①労務提供者が会社の事業の遂行に不可欠な労働力として,その恒常的な確保のために会社組織に組み入れられていたかどうか②会社が労務提供者との契約内容を一方的に決定していたかどうか③報酬が労務の対価としての性質を有するかどうか,④当事者の認識や契約の運用において,会社の個別の修理補修の依頼に応ずべき関係にあったどうか⑤労務提供者が会社の指定する業務遂行方法に従い,指揮監督の下に労務の提供を行い,かつ,業務について場所的・時間的に一定の拘束を受けているかどうか等の事情(働き方の実態)を重視して,個人事業主であっても「労働組合法上の労働者」と認定したのです。

 

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2015.06.02更新

労働協約の効力は,労働組合に入っていない従業員には適用されないのが原則ですが,4分の3以上の従業員を組織する労働組合が締結した労働協約は,非組合員にも適用されます(労働組合法17条)。

労働協約が非組合員に適用されるかどうかにつき有名な事例があります。ある会社は,会社合併後労働条件が統一されておらず,これが長年の懸案となっていました。定年も63歳と57歳があり,また,退職金規定も二本立てでした。その後,経営悪化を理由に定年を57歳に統一し,退職金の乗率も引き下げる労働協約が締結されたのですが,非組合員がこの労働協約は自分にとって不利益であり適用されないはずだとして争ったのです。以下,労働協約の効力についての理由部分を引用します(朝日火災海上事件‐最判平成8・3・26民集50-4-1008)。(以下引用)‐ 労働協約には、労働組合法一七条により、一の工場事業場の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用されている他の同種労働者に対しても右労働協約の規範的効力が及ぶ旨の一般的拘束力が認められている。ところで、同条の適用に当たっては、右労働協約上の基準が一部の点において未組織の同種労働者の労働条件よりも不利益とみられる場合であっても、そのことだけで右の不利益部分についてはその効力を未組織の同種労働者に対して及ぼし得ないものと解するのは相当でない。けだし、同条は、その文言上、同条に基づき労働協約の規範的効力が同種労働者にも及ぶ範囲について何らの限定もしていない上、労働協約の締結に当たっては、その時々の社会的経済的条件を考慮して、総合的に労働条件を定めていくのが通常であるから、その一部をとらえて有利、不利をいうことは適当でないからである。また、右規定の趣旨は、主として一の事業場の四分の三以上の同種労働者に適用される労働協約上の労働条件によって当該事業場の労働条件を統一し、労働組合の団結権の維持強化と当該事業場における公正妥当な労働条件の実現を図ることにあると解されるから、その趣旨からしても、未組織の同種労働者の労働条件が一部有利なものであることの故に、労働協約の規範的効力がこれに及ばないとするのは相当でない。
 しかしながら他面、未組織労働者は、労働組合の意思決定に関与する立場になく、また逆に、労働組合は、未組織労働者の労働条件を改善し、その他の利益を擁護するために活動する立場にないことからすると、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容・労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼすことはできないと解するのが相当である。‐(ここまで引用)
 このように,判例は,労働協約についての一般的効力を定める労働組合法17条は,その有利不利を問わず非組合員にも労働協約を及ぼす趣旨であるとしたうえで,労働協約を適用することが著しく不合理であるときには当該労働協約を非組合員に及ぼすことはできないとしたのでした。そして,事案の解決としては,非組合員である労働者について57歳が定年とされて退職金も減額されるのは著しく不合理であるとして労働者側の訴えを認めたのです。

 

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